僕は君じゃないけど
君には決してなれないけど
僕は、君になりたかった。





        点と線






 ―― 僕はマイティじゃない。
 ―― マイティを殺したのは僕だ。





みんなに言うのと同時に、自分自身にも言い聞かせる。



(僕は・・・マイティじゃない)


どんなに願ってもマイティにはなれないから。











「マイティのバッチ・・・」



ゼロは地面に置かれたバッチを拾った。
シロボンが置いていったものだ。
このバッチが、ゼロに対する彼なりの答えなのだろう。


たくさん悩んだと思う。
たくさん迷ったと思う。
少しは泣いたのかもしれない。
そうして出した答えなんだとおもう。





すごく、強くなったと思った。


それに比べて自分は―――



あのとき、ゼロはマイティをコピーした。
だがコピーはコピーでしかない。
『マイティ』には決してなれない。


記憶を取り戻してすぐの時期は、ゼロは自分の中の『マイティ』を肯定したかった。
『マイティ』でいたかった。
自分がマイティならば、許してもらえると思った。
皆のそばに居られると思った。
だが、その気持ちと同時に逆の感情も生まれていた。




マイティを殺したのは・・・シロボンの兄を、ジェッターズのリーダーを奪ったのは、
マイティの身近な人たちから彼を奪ったのは


MA−0・・・ゼロ自身なのだ




その事実は変えようがない。
そのことがずっとゼロの頭から離れず、シロボンたちを避けてしまっていた。
許されるはずがない。
いや、許されていいはずがないと。




マイティの延長線上に、ゼロは居る。
いわばマイティとゼロは線で繋がれた二つの点だ。
繋がりはあっても、その両端の点と点は別のものなのだ。
二つの点が重なることはできない。


そのことにはとっくに気がついていた





ゼロであり、マイティであるこの身が疎ましくなる。
いっそのことマイティの記憶などなくなってしまえばよかったとも思う。
けれど、今。
シロボンはマイティのバッチをゼロに渡したのだ。
兄の仇であるはずのゼロに。


まだ許されてはいないだろう。
だが、とても救われた。





(ありがとう・・・)





すこし汚れたバッチを見る。
これを付けられないのがすこし寂しい。
でも、今はいい。
これを持つ権利がある。


今は、それだけで十分だ。









しばらくバッチを眺めていたゼロはそれを大切にしまいこむ。
まだやらなければならないことがある。
終わらせなければならない。
すべて片が付いたらそのあとは・・・




「・・・いくか」




ゆっくりと立ち上がり、歩き出す。
僕に小さな救いをくれた彼のところへ。
























             H18・1・3
                    By 淡雪



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