― そんな事、夢のまた夢。



「…――!
つぎはこーひーかっぷにいこ!」


ちいさな黒い手。
たぶん僕の手だろう。

こんなに小さい頃なんて
あったかどうかも
覚えていないし、
こんなところに
きた覚えもない。

人間は
ここは夢の中なのだと
夢の中で自覚することが
たまにあるらしいが、
今のような感覚なのだろう。
でも、
今は自分を遠くから見ている。
自分が自分じゃないみたいだ。

周りをみわたすと、
僕の周りは沢山の色で
満ちていた。

キャストの人が
子供たちに配る風船は

赤 黄色 緑 ピンク

ふと空を見上げれば
透き通るような

青 水色 白

そして、
幼い僕が急かすように
ひいているのは、
くすくすと笑う君の右手。

「急がなくても
大丈夫よ」

「はやくしないと!
まりあ!」

にぎやかな音楽。
人々の笑い声。
パレードでにこやかに踊る
ダンサー。

初めて見る世界。
自分の感情と記憶だけで
こんなにも自分が
向きあっている現実と
かけ離れた世界が
生み出せるなんて。

「シャドウ!
シャドウってば!
早く並ぶんでしょう?」

気がついたら、
幼い自分は
いなくなっていた。
マリアが
話しかけていたのは
"僕自身"だった。

夢のなかは
常に状況理解に苦しむ。

「え・・あぁ。そうだな。」

「はやくいきましょう!」

今度はマリアが、
僕の手をひいた。

ここが
マリアが行きたいと望んだ
遊園地という
場所なのかもしれない。

マリアの顔は、
今の状態からはわからない。
でも、
その後ろ姿ですら

笑っているような気がして。







「また、絶対一緒に来ようよ。」


遊びつかれて
花壇の端っこの座る僕らに
西へ沈んでいく太陽が
光を浴びせる。


"もう、おきろ"

沈んでいく太陽は、
じきに太陽が昇ると言った。

そうか。
もう、時間か。
とつぶやいた。

「なんの時間?」

マリアは聞き逃さなかった。
僕は
この素敵な世界に
長くは、もういられない。






「お別れの時間だ、
マリア。
・・・おはよう。」

僕は静かに目を閉じた。

途切れぬ
人々の笑い声も

永遠に終わらない
パレードの音楽も

少女が僕を呼ぶ声も

どんどん暗闇のなかで
遠ざかっていった。
















「シャドウ、任務だ。
さっさと準備をして、
司令室へ行け。」

僕が
暗闇から出れたのは、
軍の幹部からの放送の
おかげなんて、
皮肉な話である。

僕は、寝違えていたのか、
首が尋常じゃなく痛い。

すごく、
よく寝たきがする。
何か夢でもみていたのか。

珍しく、
悪い夢を見なかった。
久しぶりの安眠・・・

何かいい夢でも
見たのかもしれない。

なのに、

いい夢に限って
"いい夢"としか思い出せない。

でも、

またきっと、
同じ夢が見られるだろう。

そんな
気がした。

気がしただけだ。



『また、絶対一緒に来ようよ。』



おわり









だーじりんさんからの相互記念ノベルです!
「シャドマリ」とリクエストしたら、なんと、なんとこんなに心暖まるお話を・・!!
ちょっぴり切ない、でもなんとなく元気をもらえるような・・・本当に泣くところだった・・・
やっぱりだーじりんさんのシャドマリ大好きです!ありがとうございました☆




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